- 2025年7月18日
古代の書記官、腰痛に悩む
日本人の15%が「腰痛持ち」と言われれます(腰痛に関する全国調査2023より)。
当院でも腰の痛みを訴えられる患者さんはとっても多い印象です。
前述の調査では腰痛を訴える方の43%が治療を必要とし、15%は仕事を休まざるを得ず、1%は入院を要したとのこと。

「腰痛は二足歩行の宿命」なんて言い方もされますが
立つこと歩くことよりも、座ることが腰痛に悪影響を及ぼす、と
フィンランドのJooa Norha先生は仰っております(BMJ open 2024)

ええ、古代エジプトでも座ることで腰を傷めることは知られていました。
チェコの Veronika Dulíková らの研究 (Scientific Reports 2024) によれば
古代エジプトの遺骨の調査から、書記官に脊椎の変形と関節炎が多いことを突き止めたそうです。

古代エジプトではエリート中のエリート(好待遇)で知られる書記官ですが
来る日も来る日も、重い石版を抱えてパピルスに書き物の毎日…
そりゃ腰も痛くなりそうです。
このほか、ペン(葦で出来てる)先を噛んで整えることに起因する顎関節症や
手を使う人に多い母指CM関節症も、書記官に多く見られたのだとか。
文字通り「身を削って」職務に邁進しておられたのですね。

なんと4000年前に、すでに今に通じる外科処置や薬物治療も行っていた古代エジプトのお医者さま方ですが(傷口にカビの生えたパンを当てて治療する、なんてペニシリンじゃないですか!)
悠久の時を超え、今こうして僕らは、同じ星空を見上げながら
先人たちと同じく、日々痛みに悩まされる方々と共に腰痛に取り組んでいる、なんて
なかなかのロマンですね。